異性との相性となると、同性よりもずっと複雑になってきます。
人は成長するに従って、環境等など、自分でよく分かっている性格(主機能)の面だけ
ではなく、それまで無意識の中に眠っている劣等機能が様々な形で影響してくるのです。
たとえば思考的な人は、感情的なものが、外向的な人は内向的なものが無意識の中で眠っているのです。
そこからいろいろなイメージがわき起こり、そのイメージが無意識の中で大きく成長してしまいます。
これは自分自身の分身でもあるのです。イメージは漠然としたものです。女性であれば強く
たくましい白馬の王子、男性であればやさしくて汚れのない美女に憧れているといったところです。
異性と出会ったときに、相手が自分の幻想を引き出す何かを持っていたら、自分の中のイメージが
刺激されてひかれます。ですから、そこでは、自分の無意識的な心理機能(劣等機能)が出てしまう
ことになります。そのために、自分の性格と反対の人に魅せられることが多いのです。
感情的な女性であったら、頭のいい思考的な男性に憧れるということがしばしばあります。
異性の場合は、同性同士であればもっとも合わないはずの、態度も機能も正反対
の人に強くひかれるのです。(異性でも友人となれば少しちがってきます。)
恋愛をしている最中には、自分とまったく性格が反対なために、相手のことがよく分からずに、
神秘的に思えるのです。恋愛は現実の生活とは違うので、性格の合わないところが、かえって魅力的に
見えるのですが、結婚して一緒に生活してみると、ことごとく合わないことがわかってくるのです。
一般的な家庭では、お互いに合わないと分かっていても、仕方がないと諦めて暮らしているのではないでしょうか。
結婚当初はケンカしたりするのですが、子供ができると、「仕方ない」と、お互い諦めてしまうのです。
そこで、女性は子供に自分の愛情を注ぎ込むことになります。男性は、仕事にのめり込んでいくことになります。
こうした家庭では、夫婦は一人の男と一人の女として向かい合うことがありません。
つねに子供を間に立てての、「お父さん」と「お母さん」になってしまうのです。
家庭においても、結婚する前と同様に男と女という関係を続けているのは、本当にまれなケースといえるので
はないでしょうか。お互いに合わないで我慢し合っていても、このように家庭を維持できているのは、
まだマシといえるのかもしれません。離婚にいたる組み合わせとしては、一方が支配的に振る舞って、性格が合わ
ないにもかかわらず、相手を自分の思うようにさせようとするケースです。支配的に振る舞って相手を自分の
思うように振る舞わせたいという人は、相手の性格が自分とまったく合わないということがわかってないのです。
しかしながら、夫婦関係というのは、そう単純なものではありません。
それだけに、お互いに性格が合わなくても、ケンカをしながらも、その中から
それなりに理解を深めていくことができる存在でもあるといえるのです。
本来はまったく性格の合わない二人が、結婚という法律に縛られることによって、ケンカしながらも、
長年一緒に暮らしていくことでピッタリと合った夫婦になっていくともいえるのです。
それでは、何も性格が合わないことで苦労しなくても、同じタイプ同士の男女が結婚して一緒に
生活して行けば、確かにぶつかり合うといった局面は少ないのです。しかし、その反面、対立する
ことがないために、一方的になりすぎて人間的に成長することはあまり期待できません。つまり、同じ
タイプ同士の場合には、相手から刺激を受けて、自分の無意識の中に残されている機能を発達させることが
なかなかできないのです。そのため、無意識に置き去りにされた機能はそのまま未発達のままなのです。
人間の成長とは、自分の無意識の中に置き去りにされている未発達な機能を
開発することによって、統合された人格に向かうことなのです。
それが同じタイプ同士で充足し合っていると、そのままの自分でいいと思い込んでしまい、
その自分から一歩も成長できないのです。また、外の世界に対して、二人だけのカラを作り上げて、
自分にわからない、合わないものはすべて排除してしまうといった閉鎖的な世界に入り込んでしまう
危険性も大きいのです。すると、何処かで自分の無意識の中に抑えられていたものが、
そのはけ口を求めて、とんでもないところで出てしまう危険性もとても大きくなるのです。
人間的成長という面から考えると、自分とタイプのちがう相手と結婚したほうがいいといえるのです。
そこでお互いに対決することによって、人間的に成長していくこともできるのです。
相手を見ていて、イライラしたり、「いやだ」と感じるのは、自分が不得手なところに触れたり、
あまり好ましいと思っていない部分だからなのです。とくに一緒に生活すると、相手のそんな面が
とてもよく見えてしまいます。人間というのは、なかなか複雑な性格ですので、主機能だけでなく、
自分の苦手な機能を開発する上では、異性を好きになり、その相手から影響を受けることによって
開発していくことがもっとも有効なのです。恋愛をすることによって、未発達な機能を目覚めさせ、
完成された人間へと立ち向かっていき、人間ははじめて人間らしくなっていくということもできるのです。
(もちろん恋愛以外においてでも、学ぶことはあるでしょうが。)
最後に「霊界の広報マン」丹波哲郎氏の言葉を借りましょう。
「夫婦というのはもっとも合わない同士が一緒に結びつくことになっていて、
そこでお互いに現世の世界で修行を積むのだ」